リメンバー・ミー

 先日、ディズニーアニメを見ました。昨年話題になった『リメンバー・ミー』という作品です。「私を覚えていて」ということでしょうか。
お話はメキシコが舞台で先祖を敬い供養することがテーマになっていました。
映画では「死者の日」の出来事が描かれています。死者の日とは日本のお盆と同じように、一年に一日だけ先祖が子孫の家に帰って来る日として大切にします。
祭壇にご先祖の写真を飾り好物をたくさんお供えして、家族全員でお祈りをしご馳走を食べて賑やかに過ごします。ただし帰れる先祖には絶対条件があって自分の写真が飾られていないといけないのです。写真もなく自分の事を思い出してくれる人が一人もいなくなると死者の世界からも消え去ってしまうのです。
主人公のミゲル少年のひいひいおじいさん、つまり高祖父が世界的なミュージシャンだったのですが家族を捨てて自分だけ好きな道を選んだため高祖母は塗炭の苦労を味わいます。その為決して子や孫達にも彼の写真を飾らせようとさせません。しかし自分もミュージシャンを目指すミゲルは高祖父に会いたい一心で、ある事がきっかけで死者の世界へ迷い込みます。そこで彼は誰にも写真を飾って貰えず死者の世界からも消えかかろうとしている高祖父を見つけたのです。なんとか消えるのを食い止めようと必死に頑張ります。最後は様々な誤解も解け高祖父は写真を飾ってもらうことができ子孫共々ハッピーに暮らしたという話です。

この話のテーマは高祖父が語る「人間は二度死ぬ。一度目は肉体の死。二度目の死は自分が家族の思い出からも消えてしまうこと」
私たち仏教徒が営む法事の意義もここにあるのではないでしょうか。年月の流れの中で死者の存在が薄れ行く。凡夫には致し方のないことかも知れません。だからこそご先祖様は私たちに思い出す為のすべを残してくれていたのです。
私も貴方も必ず「リメンバー・ミー」になるのです。
2019年11月『信友』掲載